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YouTube紹介 - 日米首脳会談とクワッドをどう評価すべきか

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2022年5月23日・24日に相次いで開かれた日米首脳会談とクアッド。

 

ウクライナでの戦争もあり、日本の安全保障を考える上でもとりわけ重要な外交日程です。この記事では、識者の方々のユーチューブを元に、どう評価すべきか考えてみました。

 

参考にしたのはこちらの動画です。

 

真相深入り!虎ノ門ニュース

【DHC】2022/5/24(火) 百田尚樹×江崎道朗×居島一平【虎ノ門ニュース】 - YouTube

【DHC】2022/5/25(水) 井上和彦×河野克俊×山田吉彦×居島一平【虎ノ門ニュース】 - YouTube

髙橋洋一チャンネル

484回 日米首脳会談はまずまず。先だと喜ぶ韓国は哀れ - YouTube

奥山真司の地政学・リアリズム「アメリカ通信」

日米首脳会談の主人公は「習近平」!?~バイデン大統領でも岸田首相でもないんです...|奥山真司の地政学「アメリカ通信」

長谷川幸洋高橋洋一のNEWSチャンネル

【台湾有事 米国防衛】『対中露北 拡大抑止』 - YouTube

 

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今回の会談はなかなかトピックが多いのですが、その割には岸田首相の存在感はあまりありません。

 

作家の百田尚樹さんなどは

「華がない」

と一刀両断ですし、地政学者で戦略学者の奥山真司さんも

「今回の主役は中国」

と言い切っています。

 

他の論客も、岸田首相に言及した発言は多くは見らません。

 

ひとつあるとすれば、防衛費の「相当な増額」をバイデン大統領に伝達したことでしょうか。長い間、防衛費をGDP1%枠に留めていた日本にとっては大きな政策変更なのですが、事前に自民党内で提言が出ていたこともあって、そこまで大騒ぎにはなっていません。

 

奥山真司さんは

「メディアの論調も変わった」

「もし安倍さんが言ってたらギャーっと騒いでいた左派のメディアがあった。でもそれも(今では)仕方ないな、っていう風に左派メディア側が姿勢を示した。」

と、岸田首相や日本政府よりも、メディアについて言及しています。

 

また数量政策学者の髙橋洋一さんは

「倍増が好きな岸田さんが何で相当って言っちゃうんだろう」

と、もはや聞かれなくなった「令和の所得倍増」と対比させる形で揶揄した上で、

「2%に行かないと世界の国から『お前真面目にやってないだろう』と言われるだけ。いざというときに助けてくれない。」

「日本は中露北朝鮮の三正面作戦になっちゃってる。(防衛費は)一正面で1%って言ってるから、3倍増しないと絶対足らない」

と、さらなる増額を主張しています。

 

会談の後、安倍元首相が「6兆円後半から7兆円」との見解を披露しました。どうやら、増額されるのはもはや決定済みのようなもの。今後は実際にどの程度の増額になるのかが焦点になりそうです。

 

また、日米共同宣言では「米国の拡大抑止が信頼でき」ることなどを「確認した」との文言があります。アメリカがここまで日本の防衛を強調することはあまりなかったようで、これには髙橋洋一さんも

「中国はびっくりしたんじゃない」

と言っていますし、講談社特別編集委員の近藤大介さんも

「中国の報道官が吠えている」

としています。

 

台湾や尖閣を狙う中国にとっては非常に困ることのようです。

 

ただ、ジャーナリスト・長谷川幸洋さんは

尖閣のためにアメリカが核戦争のリスクを冒すことはない」

と見ています。

 

日本の防衛は日本が主体として担わなければならないことは変わりはないようです。(当たり前ですが)

 

一方、バイデン大統領の台湾についての発言に注目が集まっています。

 

ひとつは、記者から台湾有事でアメリカが軍事的関与するかを問われ、

「イエス。それが我々の責任だ」

とした発言です。

 

アメリカはこれまで、台湾有事での関りを明言しない「曖昧戦略」を取っていました。それをはっきりと「関与する」と明言したのですから、注目されるのも当然です。

 

ただ、バイデン大統領はこれまで2度も同じような発言をしていて、そのたびにホワイトハウスは「台湾政策に変更はない」と訂正しています。今回もバイデン大統領の失言なのでしょうか。

 

これについて、軍事評論家の井上和彦さんは

「3度目の正直」

としていますし、元統合幕僚長の河野克俊さんは

「中国に対して大きなシグナルになったと評価する」
「失言か確信犯か分かりませんが(笑)確信犯と信じている」

と、やや苦笑いしながらも好意的に評価しています。

奥山真司さんも

「(バイデン大統領も)分かってやっている。報道官とも示し合わせてやっている」

としています。

 

それでも、アメリカは今回も台湾政策に変更はないと火消しに奔走していますし、

長谷川幸洋さんは

「米軍を派遣しますと言った訳ではないから、以前曖昧戦略に変わりはない」

との主張です。

 

「軍事的関与」という言葉は、今回、ウクライナにした武器支援なども含まれる、比較的幅広い意味があるようで、やると言ったとしても、何をどの程度まで、というのは相変わらずはっきりしません。

 

ましてやバイデン大統領が「関与する」と言ってはホワイトハウスが「これまでと変更ない」と訂正することを3回も繰り返していて、本当の真相は、良く分からないです。

 

評論家の江崎道朗さんは

アメリカは国防費を(実質的に)減らしている。言葉と予算にずれがある」

と指摘していますし、髙橋洋一さんは

「バイデンさんだからときどき(変なことを言うことも)ある」

「曖昧戦略を見直したかどうかも曖昧」

と、比較的悲観的な見方を示しています。

 

ただそれでも、1回目の失言(?)の頃よりは、アメリカも少しづつ踏み込んでいるんじゃないかと期待する向きが増えてきているのは確かです。

 

アメリカは今後も明確は政策変更を宣言することはなく、実際に事が起きるまでは曖昧戦略を貫くのかもしれません。本当のことはその時になるまで分からない、というのが正確な理解なのでしょう。

 

またバイデン大統領は、新たな経済枠組みとしてIPEFを提唱しました。

髙橋洋一さんは

「台湾が入らなかったのは残念」

としながらも

アメリカは13か国(という数)を優先したのだろうが、いずれは入るだろう」

と、今後に期待感を示しています。

IPEF、TPP、さらにはRCEPと日本が関わる経済協定が複雑化してきましたが、奥山真司さんはこちらの図で整理しています。

ひとつひとつの国を覚えるのは大変なので、ひとまずは

日本のTPP+アメリカのIPEF vs 中国のRCEP

と理解すればいいのではないでしょうか。

 

最後にクワッドについて。髙橋洋一さんは

「安倍さんが官房副長官の時代からやってたこと」

「インドを民主主義の側に付けとこうという意図はある」

「次にポイントになるのはイギリス」

と言っています。

 

安倍さんが長年やってきたことが実を結んだというのは事実なのですが、日本人にもあまり認識されていないようです。

 

安倍さんが、というのが個人的過ぎるというのなら、せめて「日本が主導して作った枠組み」ということくらいは、知っておきたいものですね。何せ日本がアメリカを含めた他国に働きかけて外交関係を積極的に作ったなんて、戦後初めてのことでしょうから。

 

また山田正彦さんは、オーストラリアの首相が交代した直後だったことから、

「時を得た」

と評価しています。

 

以上、ざっとではありますが、全体を見渡してみました。

感触としては、

元々中国の台頭が脅威として認識され始めていたところ、ロシアによるウクライナ侵攻があり、中国の脅威も改めて現実味を帯び、それに伴い世界の安全保障における日本の役割が俄然、注目されはじめたということでしょうか。

 

今回、新たに何かが決まったということよりも(IPEFは今回が初めてですが)、日本とアメリカ、そして台湾を含む民主主義国と中露の対立構図が改めて鮮明になった。戦後の秩序がいよいよ動き出した、ということでしょうか。

 

これからの世界がどうなるかは分かりません。が、今が日本も世界も大きな転換点であることだけは間違いないでしょう。